型式承認制度
Type Approval Guide
第1章 型式承認制度の概要
型式承認制度とは、船舶安全法、海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律(以下「海防法」という。)の規定に基づく検査を合理化するための制度であり、同一の型式の物件が大量に生産される場合において、型式承認を取得することにより検査をより合理的に受検できる制度です。
型式承認を取得できるのは、汽笛、船灯等の航海設備、救命艇、救命胴衣等の救命器具、油吸着材、油水分離器、その他の船用品等の製造者です。ここで、製造者とは、物件を設計し、その主要部分を製造し、かつ、組み立て(組み立て後の完成品の確認を含む。)を行う者をいいます。ただし、製造または組み立て(組み立て後の確認を除く。)の一部または全部を外注する場合にあっては、当該外注に係わる納品検査を行う体制が整っている者に限り、当該者を製造者とみなします。
型式承認取得製造者が承認を受けた物件を製造し、製造した物件が型式承認を取得した物件と同一であることを確認するための検査(検定という。)を受け、これに合格した場合は、当該検定に合格した事項について検査が省略されます。
型式承認は、物件が技術基準に適合するものであり、かつ、型式承認を受けようとする者(製造者)がその物件を製造する能力を有するか否かを判定することにより行われます。
1. 型式承認を取得するために
型式承認の対象物件は、船舶安全法関係については船舶等型式承認規則別表第一、海防法関係については、海防法施行規則別表第五及び海洋汚染防止設備型式承認規則別表第一に掲げられた物件で、これらの物件について型式承認を取得するためには、当該物件の型式が船舶安全法又は海防法の規定に基づき定められている技術基準に適合するものであり、かつ、当該型式承認を受けようとする者が当該型式に適合する物件を製造する能力を有することが必要です。
原則として、当該物件が技術基準に適合するかどうかは、型式承認試験基準に基づき試験を実施することにより判定され、物件を製造する能力を有するかどうかは、工場への立ち入り調査により判定されます。
型式承認の手続きの大きな流れは、次図のとおりです。
2. 事前打ち合わせ
型式承認を受けることができる物件、適用される技術基準等は変更されるこがあります。さらに型式承認の申請を行う場合には、所定の資料を提出する必要があります。
また、工場の立入り調査、型式承認試験の実施などの手続きを経る必要があります。
このため、型式承認の申請を円滑に行うためには、提出する資料の内容、工場の立入り調査の実施日時、型式承認試験の実施内容等について、型式承認を担当されている部署と、予め十分な打ち合わせを行ってください。 また、当会が業務として行っております支援業務(第2章参照)をご利用いただくことをお勧めいたします。
3. 型式承認の申請
型式承認を受けようとする方(製造者)は、1~3号様式(MS-Word or Adobe Acrobat)の内、該当する様式の申請書(用紙は原則としてA4判)、手数料納付書(MS-Word or Adobe Acrobat)(規定の額に相当する収入印紙を貼り付ける。)及び以下の添付書類を添えて物件を製造する事業場の所在地を管轄する地方運輸局、海運支局等の窓口に申請することとなります。
この場合申請者の欄には、代表権を持つ者の氏名及び押印を必要としますが、代表者本人の署名でも申請はできます。
なお、型式承認の申請に係わる手数料の額は定期的に改正されますので、当協会又は地方運輸局等にお問い合わせ下さい。
添付書類
(a) 申請に係わる物件(以下「申請物件」という。)の性能、形状、構造及び材料等を記載した製造仕様書
(b) 申請物件の構造、配置等を示す図面
(c) 申請物件の型式が技術基準に適合していることを説明する書類(試験成績書等)
(d) 使用方法説明書
(e) 製造実績(当該型式に係わる物件の実績がないときは、類似する物件の実績)
(f) 事業場の施設の概要及びその配置
(g) 製造工程及び品質管理基準
製造工程のフローチャート及び社内試験基準(材料等の受け入れ検査、中間検査、納品検査、完成品検査等確認検査)を記載したもの。
ただし、型式承認を受けようとする物件の主要部の製造又は組み立ての一部又は全部を外注する場合においては、外注先の事業者等における製造工程のフローチャート及び社内検査基準をあわせて添付。
(h) 製造者の当該型式の製造及び品質管理に係わる部門の機構図
(型式承認を受けようとする物件の製造に携わる人員を明記。)
(i) 表示の方法(申請物件の名称、型式、寸法、使用方法、製造年月、製造番号及び製造者の氏名又は名称若しくは記号の表示方法を記載。ただし、寸法又は使用法を表示する必要がないと認められている物件についてはその表示を省略できる。)
(j) 定 款
(k) 申請に係わる物件のパンフレット、会社案内、経歴書等
(l) 型式承認を受けようとする物件がコンテナの場合にあっては、安全なコンテナに関する国際条約の付属書1第5規則設計型式による承認に関する規定3に規定する製造者の誓約書
(m) 型式承認を受けようとする物件が電波法第7条の規定により、総務大臣の行う検定に合格した告示(船舶等型式承認規則第6条第1項ただし書きの物件を定める告示)に定められた航海用レーダー、ナブッテック受信機等にあっては、無線機器型式検定規則第9条第1項の規定により交付された無線機器型式検定合格証書の写し
参考:船舶等型式承認規則第6条第1項但し書きの物件を定める告示
船舶等型式承認規則第6条第1項の告示で定める物件は次の物件です。
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浮揚型極軌道衛星利用非常位置指示無線標識装置
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非浮揚型極軌道衛星利用非常位置指示無線標識装置
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小型船舶用極軌道衛星利用非常位置指示無線標識装置
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レーダー・トランスポンダー
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持運び式双方向無線電話装置
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固定式双方向無線電話装置
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自動離脱装置
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ナブテックス受信機
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高機能グループ呼出受信機
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航海用レーダー
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自動衝突予防援助装置
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VHF、MF又はHF用デジタル選択呼出装置
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VHF、MF又はHF用デジタル選択呼出聴取装置
(n) 型式承認を受けようとする物件が排出油防除資材の場合にあっては、上記の書類に加え、次の物性試験の結果を記載した書類を添付してください。
4. 製造工場への立入調査
型式承認の申請が行われ、提出された書類に不備がない場合、地方運輸局等の検査官等が申請者等の製造能力について事業場への立入調査を行います。
5. 型式承認試験
申請された物件が技術基準に適合しているものであることを確認するため、型式承認試験基準に基づき型式承認試験を実施することが必要となります。
型式承認承認試験は、原則として国土交通省海事局検査測度課担当官の立会のもとに申請者が実施することとなります。
しかし、申請書に添付されている書類の内、「(C)申請物件の型式が技術基準に適合していることを説明する書類」として提出された試験成績書等の内容を勘案して差し支えないと認められたときは、型式承認試験の全部又は一部が免除されることがあります。
どのような試験成績書を提出すれば型式承認試験が免除されるかについては、国土交通省海事局検査測度課に又は当協会の行っている支援業務(第2章参照)を受けられる方は当協会へお問い合わせください。
なお、社内試験成績書のみが提出された場合、原則として、型式承認試験に定められている全項目について国土交通省海事局検査測度課の担当官立会いのもと、型式承認試験を実施することが必要となります。
さらに、船舶等型式承認規則第6条第1項の規定に基づく告示に定められている物件であって、電波法第37条の規定により総務大臣の行う型式検定に合格した物件については型式承認試験が省略(注参照)される場合があります。
注:船舶安全法に基づく型式承認試験基準の中で、電波法に規定されていない試験課題は省略されません。詳しくは国土交通省海事局検査測度課にお問い合わせください。
6. 型式承認証書の交付
書類を審査し、製造工場を立入調査し、かつ、型式承認試験の結果から判断して、当該申請に係わる物件が基準に適合していると認められた場合、国土交通大臣により、当該型式について承認が行われ、型式承認書が交付されるとともに官報に告示されます。
7. 型式の変更承認について
型式承認を受けた者は、当該型式承認を受けた物件の型式について、性能等に影響を及ぼす恐れのある変更をしようとする場合は、変更しようとする事項及びその理由を記載した次の5号様式又は6号様式(MS-Word or Adobe Acrobat)の申請書に手数料を添え、かつ、前記1.(3)に掲げた添付書類の内、当該変更にかかわるものを添付し、型式承認を申請した地方運輸局等に提出した上、国土交通大臣の変更の承認を受ける必要があります。
性能等に影響を及ぼす変更とは、例えば、救命艇用機関の出力の変更や救命胴衣の形状の変更等で、当該変更により型式承認試験の結果に影響を及ぼすような変更です。
この場合、申請者は、当該変更後においても、その物件が技術基準に適合していることを証する資料を準備するとともに、当該変更に係る型式承認試験を受ける必要があります。
変更が承認されたときは、国土交通大臣よりその旨官報に告示され、型式の変更承認書が型式承認と同様の方法により交付されます。
8. 型式の変更の届出について
型式承認を受けた者は、その性能等に影響を及ぼすことのない変更をしようとするときは、変更する時期の1ヶ月位前にあらかじめ変更しようとする事項及びその理由を記載した書面(MS-Word or Adobe Acrobat)により、型式承認を申請した地方運輸局等を経由して国土交通大臣あてに型式の変更の届出を行わなければなりません。この場合、型式承認の際に提出した書類のうち、当該変更部分に係る書類を変更内容の新旧が容易にわかるようにして添付することが必要です。なお、手数料は必要といたしません。
性能等に影響を及ぼすことの少ない変更とは、例えば、アクセサリー等の変更で、当該物件の型式承認試験の結果に影響を及ぼさないような変更です。
9. 型式承認を受けた者の名称、住所等の変更届けについて
型式承認を受けた者(型式承認を受けたものが死亡し、又は解散した場合はその相続人又は精算人)は、次に掲げる場合は、その旨すみやかに(原則として変更が生じた日から1カ月以内)型式承認を申請した地方運輸局等を経由して国土交通大臣あてに届け出なければなりません。
(a) 型式承認を受けた者の氏名若しくは名称又は住所に変更があったとき。
(b) 型式承認を受けた者が死亡し、又は解散したとき。
(c) 当該型式の物件の製造に必要な事業場の施設のうち主要なものに変更があったとき。
(d) 当該型式の物件の製造に係る事業を廃止したとき。
10. 型式承認の失効及び取り消しについて
型式承認を受けた者が次の各号の一に該当するときは、その型式承認は効力を失います。
(a) 死亡し、又は解散したとき
(b) 当該型式の物件に係る事業を廃止したとき
(c) 型式承認を辞退したとき
また、国土交通大臣は、次の各号の一に該当するときは、その型式承認を取り消し、又はその他の必要な処分をすることができます。
(a) 当該物件の型式が、技術基準の改正によって、これに適合しなくなったとき。
(b) 型式承認を受けた者が、当該型式に適合する物件を製造する能力を有しなくなったと認められるとき
(c) 型式承認を受けた者が当該型式の物件の検定に関し、不正な行為をしたとき。
(d) 型式承認を受けた者が型式の変更又は届け出をしなかったとき。
(e) 型式承認を受けた者が、当該型式の物件を引き続き相当期間製造しないとき。
(f) その他国土交通大臣が特に必要と認めたとき。
前各号に該当して型式承認がその効力を失い又は型式承認が取り消されたときは、その旨官報に告示されます。
11. 検定を受けるために
型式承認を受けた者が、検定を受けようとするときは、次に掲げる事項を記載した申請書と当該物件に係わる手数料を金融機関へ振込み、その領収書を添えて、小型船舶(総トン数20トン未満の船舶を小型船舶といいます)用の物件の場合は日本小型船舶検査機構、その他の物件の場合は財団法人日本舶用品検定協会(両者を以下「検定機関」といいます。)に提出しなければなりません。
なお、手数料は検定機関によりその体系が異なりますので、詳細については、検定機関にお問い合わせ下さい。
(検定申請書に記載する事項)
(a) 検定を受けようとする物件の型式承認番号、名称及び型式
(b) 検定を受けようとする物件の数量並びにその製造年月及び製造番号
(c) 検定を受けようとする物件を製造した事業場の名称及び所在地
検定機関は、検定を受けようとする物件が、型式承認を受けたプロトタイプのものとの同等性を確認することにより、検定の合否を判定します。
例えば、救命艇の場合で、艇の外観寸法等は同一であっても、搭載しているエンジンが、型式承認を取得するときに、仕様書等に明記していたものと異なるメーカのエンジンを搭載した場合は、例えエンジンの諸元が同じであっても、型式承認を取得したものと同等のものとはいえませんので注意が必要です。このことはすべての物件についてあてはまりますので御留意してください。
検定に合格した場合は、当該物件に検定合格を示す証印を附します。
このため、標示のための銘板等には、証印のためのスペースをあけておく必要があります。
なお、製造者は証印の附された物件について、検定合格証明書交付申請書を提出すれば、検定合格証明書の交付を受けることができます。
検定に合格すれば前記の証印が附されますが、証印の附された物件については、検定に合格後最初に行われる船舶検査等において、当該検査に合格した事項につき検査の省略等が行われます。
ただし、検定に合格後著しく期間が経過していること等により、技術基準に適合しなくなっているおそれのあると認められるときは、検査の省略は行われない場合があります。
第2章 協会の役割について
1. 概要
当協会は、従来から、船舶安全法の検査制度を補完する立場で、「法定船用品製造事業者を対象とした事業」として型式承認取得業者を対象として、次の (a) ~ (c) の事業を行ってきておりますが、最近の我が国の造船業界、特に法定船用品業界を取り巻く環境は、経済のボーダーレス化の時代を迎え厳しい局面を迎えております。こうしたなかで、従来にも増して如何に自社製品を造船業界のニーズに合わせて開発、改良するかということが重要課題となってきていますが、新しく型式承認を取得、あるいは、変更する場合のコストと手間を考えて踏み切れないケースが多々あるものと思われます。
この様な現状に配慮いたしまして、当会の業務として「型式承認関係申請事務に係る支援業務」を行っておりますので、積極的にご利用ください。
(a) 船用品の性能の改善に関する調査研究の事業
(b) 国際化対応調査研究事業
(c) 型式承認調査研究事業
なお、型式承認の調査研究の一環として、英文併記の国土交通省型式承認物件一覧表を作成し、会員企業及び造船所、船主、在外公館等関係者や海外政府関係の機関にも配布し、会員企業の海外活動の一助にしていますのでご利用ください。
2. 型式承認申請に係わる支援業務
(1) 新たな物件について型式承認を取得しようとする場合
前述のとおり、申請者は型式承認を取得しようとする場合、その物件が、船舶安全法、または海防法の規定に基づき定められている技術基準に適合していることを証する書類をあらかじめ申請書に添付することが義務づけられております。
型式承認は、申請に係る物件が、技術基準に適合しているかどうか、当該物件を製造する能力を有するかどうかにより判定されますが、製造する能力があるかないかは、工場調査で、技術基準に適合しているかどうかは、型式承認試験により確認されます。
この場合、申請書に添付されている技術基準に適合していることを証する書類の内容により、試験項目の全部又は一部の試験項目について、改めて主務官庁の型式承認担当官立会いの下で試験を実施することが必要となります。
試験項目によりましては、申請者に時間的、又コスト的に大きな負担となる場合があります。
このような経済的なロスをできるだけ避けるため、会員からの要請を受け、会員に代わり当協会が型式承認担当部署と、立会い試験を行う項目等につき事前に十分な打ち合わせを行い、現行の検査制度を効果的に活用しながら、会員の負担ができるだけ少なくて済むように調整しようとするものです。
その結果を踏まえ、申請者は地方運輸局等へ所定の手続きをしていただくこととなります。
(2) 型式承認の変更をしようとする場合
型式承認取得後、コスト削減等のためにその一部について変更しようとする場合、変更の範囲、又その程度(内容)もケースにより一様ではなく、変更承認を必要とする案件となるか、あるいは単なる届出で済む案件になるかは、申請者の独自に判断することが、困難な場合が多いと考えられます。
このような場合に、申請者が独自の判断で変更承認の申請手続きを取ったものが、結果的には届け出でよかったというようなこともあり、また、この逆の場合も考えられます。
この様な場合に当協会が、会員からの要請を受け、変更しようとする内容について事前に十分な打ち合わせを行い、会員に代わりその内容に応じ、型式承認担当官と事前の調整を行い、変更承認を必要とする案件になるか、又は、届出で済む案件かに整理し、また提出資料についても、必要最小限で済むよう支援を行うものであります。
この結果に基づき、依頼者は必要な資料等を揃え地方運輸局等へ手続きをしていただくこととなります。
(3) 支援業務に係わる指導料
支援業務に係わる指導料は、「当協会の指導料徴収規程」第1条に定めるところによりますが、この場合、変更しようとする物件と、一部が異なるため別型式となっているもの(所謂シリーズもの等)については、変更部分が共通の場合これらを含めて1件とみなし取り扱うこととしております。このような場合は、当協会の担当者にご相談下さい。
3. 型式承認支援業務の申し込みについて
船用品の型式承認、型式の変更承認等について当協会の支援を希望する場合は、9~10様式(MS-Word or Adobe Acrobat)によりFAX又はメールで申し込んでください。
当協会FAX 03(3253)6204
E-mail jsmqa@coral.ocn.ne.jp